掲載日 2024.04.14
障害者は、労働市場において一般の就労者に比べて雇用機会を得にくく、国は障害者の就労の機会を保障しています。
障害者雇用促進法という法律に基づき、障害者雇用率制度の中で事業主に対し、常時雇用する従業員の一定割合(法定雇用率、民間企業の場合は2.5%)以上の障害者を雇うことを義務付けています。
法定雇用率は年々上昇しており、障害者の雇用数は増加傾向にあります。
本記事では、
・障害者雇用の現状
・課題と対策
・今後の動向
について紹介します。
民間企業(40.0人以上規模の企業:法定雇用率2.5%)に雇用されている障害者の数は、
642,178人で前年より28,220人増加(対前年比4.6%増)し、過去最高となりました。
障害の種類別データは下記です。
身体障害者は360,157人(対前年比0.7%増)
知的障害者は 151,722人(同3.6%増)
精神障害者は130,298人(同18.7%増)
以上から、特に精神障害者の伸び率が大きくなったことが分かります。
産業別では、「農、林、漁業」「鉱業、採石業、砂利採取業」「金融業、保険業」以外のすべての業種で前年よりも増加しました。
実雇用率は、12年連続で過去最高の2.33%(前年は2.25%)、法定雇用率達成企業の割合は50.1%。対前年比では1.8ポイントの上昇となりました。
産業別法定雇用率達成企業のデータは下記です。
・「医療,福祉」(3.09%)、
・「生活関連サービス業,娯楽業」(2.46%)
・「電気・ガス・熱供給・水道業」(2.41%)
・「運輸業・郵便業」(2.39%)「農、林、漁業」(2.38%)
・「製造業」(2.32%)
企業規模別にみると、雇用されている障害者の数、実雇用率、法定雇用率達成企業の割合において、全ての企業規模で前年より増加しました。
法定雇用率は、500〜1,000人未満、1,000人以上規模の企業が法定雇用率を上回っています。
引用元:令和5年障害者雇用状況の集計結果
法定雇用率とは、企業や国・地方公共団体が達成を義務付けられている従業員全体に対する障害者の雇用率です。
従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を「法定雇用率」以上にする義務があります。(43条第1項)
引用:障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和三十五年七月二十五日)(法律第百二十三号)
民間企業の法定雇用率は2.3%と定められています。
例えば従業員を43.5人以上雇用している事業主は、障害者を1人以上雇用しなければなりません。
国、地方自治体では2.6%。都道府県等の教育委員会では2.5%と定められています。
「現在雇用されている障害者数」と「失業中の障害者数」を考慮し、上記の計算式で算出されます。
法定雇用率は、障害者雇用率制度の中での現行の障害者雇用率ということになります。
障害者雇用率制度とは、下記のとおりです。
”身体障害者および知的障害者について、一般労働者と同じ水準において常用労働者となり得る機会を与えることとし、常用労働者の数に対する割合(障害者雇用率)を設定し、事業主に障害者雇用率達成義務等を課すことにより、それを保障するものである。”
厚生労働省では、障害の有無に関係なく、希望や能力に応じて、誰もが職業を通じた社会参加のできる「共生社会」の実現を理念として掲げています。
全ての事業主に、法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務があります。
令和5年度は2.3%であった民間の法定雇用率は、令和6年度には2.5%にまで引き上げられます。すでに令和8年度には2.7%まで引き上げられることが決定しています。
また、それぞれの業種における障害者の就業が一般的に困難であると認められる職務の割合に応じて決められている法定雇用率の除外率についても、令和7年4月以降に引き下げられる予定となっています。
これに伴い、令和6年4月以降、事業主に対して、雇用継続に関する相談支援、加齢に伴う課題に対応する助成金の新設や既存の障害者雇用関係の助成金が拡充されます。
企業は、今後も障害者雇用を積極的に取り入れていくよう求められています。
障害の種別ごとに年齢構成の割合を分析します。
身体障害者の年齢構成は下記です。
・18歳未満 6万8千人(1.6%)
・18歳以上65歳未満 101万3千人(23.6%)
・65歳以上 311万2千人(72.6%)
下記のグラフで65歳以上の割合の推移を見てみると、1970年には3割程度だったものが、2016年には7割程度まで上昇していることが分かります。
引用:厚生労働省「身体障害児・者実態調査」(~2006年)、厚生労働省「生活のしづらさなどに関する調査」(2011・2016年)
知的障害者の年齢構成は下記です。
・18歳未満 21万4千人(22.2%)
・18歳以上65歳未満 58万人(60.3%)
・65歳以上14万 9千人(15.5%)
身体障害者と比べて18歳未満の割合が高い一方で、65歳以上の割合が低い点に特徴があります。
下記のグラフで知的障害者の推移をみると、2011年と比較して約34万人増加しています。
引用:厚生労働省「身体障害児・者実態調査」(~2006年)、厚生労働省「生活のしづらさなどに関する調査」(2011・2016年)
知的障害は発達期にあらわれるものであり、発達期以降に新たに知的障害が生じるものではないことから、身体障害のように人口の高齢化の影響を大きく受けることはありません。
以前に比べ、知的障害に対する認知度が高くなり、療育手帳取得者の増加が要因の一つと考えられます。
精神障害者の年齢構成は下記です。
・25歳未満 38万5千人(9.9%)
・25歳以上65歳未満 206万人(52.9%)
・65歳以上 144万7千人(37.2%)
下記のグラフを見ると、30 代以降はほぼ均等に分布していることが分かります。
引用:内閣府 障害者の状況
身体障害者を年齢階級別で見ていくと、65歳以上の増加が顕著であることが分かりました。
このことから、日本の少子高齢化に伴って、身体障害者の割合は65歳以上の増加がしばらくは続くことが予想されます。
引用:厚生労働省「患者調査」における総患者数よりパーソル総合研究所作成
また、日本の精神障害者は年々増加傾向にあり、1996年の162万人から2020年の384万人まで2倍以上に増加しています。
また、精神障害者の年齢階級別では30代以降はほぼ均等に分布していました。これらのことから、今後も年齢の割合はほぼ均等な推移を保ったまま精神障害者の人口は増えていくと予想されます。
障害者雇用促進法(第43条77項)に基づいて、毎年6月1日の雇用状況を報告した際に、実雇用率の低い事業主については、ハローワーク(公共職業安定所)から雇用率達成指導が行われます。(同法第46条第1項)
翌年1月を始期とする2年間の計画を作成するよう、公共職業安定所長が命令を発出します。(同法第46条第1項)
さらに計画の実施状況が悪い企業に対し、適正な実施が勧告されます。(計画1年目12月)
(同法第46条第6項)
実雇用率が最終年の前年の6月1日現在の全国平均実雇用率未満
不足数が10人以上
雇用義務数が3~4人の企業であって雇用障害者数0人
といった基準で、雇用状況の改善が特に遅れている企業に対しては、
公表を前提とした特別指導が行われます。(計画期間終了後の9か月間が指導の対象期間となる)
特別指導では、ハローワークから対象企業に対し、
さまざまな雇用事例の提供や助言
求職情報の提供
面接会への参加推奨など
雇用義務を達成するための指導
が行われます。
不足数の特に多い企業については、当該企業の幹部に対し、厚生労働省本省による直接指導も実施されています。
特別指導を行っても実雇用率が達成できない企業については、(同法第47条)に基づき、厚生労働省のホームページで企業名が公表されます。
公表されるのは企業名だけでなく、
所在地
代表者名
事業内容
障害者雇用状況の推移
これまでの指導の経過
などの詳細な状況も同時に明らかにされます。
企業名を公表するまでには至らずとも、障害者雇用率達成指導の流れの中で、どの段階で何社に対して勧告や指導が行われたのかという数も閲覧できるようになっています。
これまでは、障害者雇用=法定雇用率を達成するための雇用という考え方が一般的でした。
しかし、これからは多様な人を戦力として活用するための雇用へと意識を改革していく必要があります。
雇用される障害者にも変化が起き始めています。今までは、単純作業やライン作業などで身体障害者が主力でしたが、高齢化によりその人口は減りつつあります。
一方、精神障害者に関しては、2018年より雇用義務の対象に加わったことや、一般的な認知度が高まったことで、当事者の受診率の上昇により、精神障害者保健福祉手帳の所持者も上昇の傾向にあります。
これまで採用してこなかった職種での障害特性を活かした収益に貢献する業務の創出や、職域でも障害者雇用の検討が可能になります。
企業は障害者の採用時に、応募者の能力を適切に評価するための合理的配慮の実施、配慮に必要な設備や体制の導入などを整える必要があります。
令和6年4月1日からは、「改正障害者差別解消法」に基づき、事業者による障害者に対しての合理的配慮の提供が義務化されます。
これらを実施しやすくするために既存の障害者雇用関係の助成金も拡充されます。
障害者介助等助成金(障害者の雇用管理のための専門職や能力開発担当者の配置、介助者等の能力 開発への経費助成の追加)
職場適応援助者助成金(助成単価や支給上限額、利用回数の改善等) の拡充
職場実習・見学の受入れ助成の新設
上記の活動で事業主障害者雇用の支援が強化されます。
これらは令和6年4月以降に、詳細が決まり次第、案内される予定です。
また、応募者の能力や適性を考慮した配置や、能力向上のための教育訓練の実施、障害特性を踏まえた相談や指導、援助ができる体制整備などを整えることで、共生社会を実現することに貢献できます。
ハローワークでは積極的な障害者雇用に向けて、障害について専門的な知識をもつ職員・相談員が配置されており、多様な相談を受け付けています。
職域開拓
雇用管理
職場環境整備
特例子会社設立等
また支援施策も実施しています。
障害者試行雇用(トライアル雇用)
職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援
職場適応訓練
障害者の態様に応じた多様な委託訓練及び各種助成金(特定求職者雇用開発助成金、障害者雇用納付金制度に基づく助成金)の案内
積極的にハローワークを利用していきましょう。
ディンプルチャレンジは、障害をお持ちの方への就職(転職)支援サービスです。
経験豊富な専任アドバイザーが1人ひとりの特徴・特色を理解し、転職に関わることを総合的にサポートします。
約1,000件以上の案件(非公開を含む)から最適な求人をご紹介
専門知識を持った専任のアドバイザーが在籍
面接の対策を一緒に行い、選考のフォローを行います
求人案件の数は1,000件を超えており、正社員の求人や、時短勤務可の求人など、1人ひとりの特徴・特色に合わせて豊富な中から選べるのも魅力です。
ディンプルチャレンジのホームページでは、
「キーワード」
「勤務地」
「職種」
を入力することで求人情報の検索が簡単にできるようになっています。
働きやすい職場探しはディンプルチャレンジがおすすめです。
障害者雇用の現状は、
民間企業に雇用されている障害者の数は、20年連続で過去最高を記録
特に精神障害者の伸びが大きくなっている
課題と対策は、
障害者雇用=法定雇用率を達成するための雇用という意識を改め、
多様な人を戦力として活用するための雇用を実現する
令和6年4月から事業者の合理的配慮が義務化されることに伴い、配慮に必要な設備や体制を整える必要がある
今後の動向は、
法定雇用率が段階的に引き上げられてきている、
既存の障害者雇用関係の助成金が拡充される
など「共生社会」への取り組みが広がっている
雇用できる障害者の幅が広がり、就業を希望する障害者の数も増加している
以上のことから、障害者雇用は今後ますます社会にとって必要不可欠となり、政府も支援施策を拡充していく方針です。
誰もが活き活きとした生活ができる社会の実現を願います。