更新日 2022.12.12
障がいのある人を雇用するときに気になるのが、雇用環境の整備にかかる費用ではないでしょうか。事業主の経済的な負担を軽減し、障がい者雇用を促進するため、国はさまざまな助成金制度を設けています。
この記事では、障がい者を雇用する場合に事業主が受けられる主な助成金について、その種類や要件、金額を紹介します。
障がい者雇用に関する助成金制度は、心身に障がいがある人を雇用するときや、雇用のための環境整備をするときなどに受けられます。助成金の申請にあたっては「雇用保険適用事業所の事業主であること」や「支給のための審査に協力できること」といった、雇用関係助成金の共通要件を満たす必要があります。
障害者雇用率制度においては、身体障害者手帳や療育手帳、精神障害者保健福祉手帳を所有している人が算定の対象です。しかし、障がい者雇用に関わる助成金については、手帳を持っていない障がい者についても助成の対象となります。
障がい者雇用に関する助成金には、主に下記のような種類があります。申請要件や支給金額などは、それぞれの助成金によって異なります。
就労が困難な障がい者を一定期間雇用する事業主に対して、規定の要件を満たした場合に支給される助成金です。
支給例:対象となる労働者が精神障害者の場合、月額最大8万円を3ヶ月、月額最大4万円を3ヶ月(最長6ヶ月間)受給できます。
継続雇用する労働者としての雇い入れを希望している、精神障害者または発達障害者に対して、3〜12ヶ月間の短時間トライアル雇用を実施する事業主に支給されます。雇い入れ時の所定労働時間は週10時間以上20時間未満ですが、トライアル雇用期間中に週20時間以上を目指します。
支給例:支給対象者1人につき、月額最大4万円が最長12ヶ月間受給できます。
障がいなどがあって就職が困難な人を、継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主に支給される助成金です。支給額や助成期間については、対象となる労働者の類型や、企業の規模によって異なります。
支給例:短時間労働者以外の者について、重度障害者等1人あたり、最大3年間で240万円が支給されます。
発達障害者や難治性疾患患者を、継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主に支給されます。対象となる労働者の類型や企業の規模によって、支給額や助成対象期間は異なります。
支給例:短時間労働者以外の者について、中小企業では障害者1人あたり、2年間で120万円が支給されます。
労働者の障害特性による就労上の課題を克服または軽減するために、必要な作業施設の設置や整備などにかかる費用の一部を助成するものです。対象となる労働者の週所定労働時間や障害の程度によって、助成の限度額は異なります。
支給例:第1種作業施設設置等助成金の場合
身体障害者や知的障害者、精神障害者を対象として、作業施設などの設置や整備にかかった費用の2/3が助成されます。限度額は、障害者1人につき最大450万円です。
労働者の障害特性に配慮した、休憩室などの福祉施設の設置や整備にかかる費用の一部を助成するものです。対象となる労働者の週所定労働時間や障害の程度によって、助成の限度額は異なります。
支給例:身体障害者や知的障害者、精神障害者を対象として、福祉施設などの設置や整備にかかる費用の1/3が助成されます。限度額は、障害者1人につき最大225万円です。
重度障害者を多数継続して雇用するために、必要な事業施設などの設置や整備を行い、障害者を雇用する事業所として、モデル性が認められる場合に支給されます。
支給例:重度身体障害者や知的障害者などを多数雇用している場合に、事業施設などの設置や整備にかかる費用の2/3(特例の場合は3/4)が助成されます。1認定あたり5000万円(同一事業所に対する支給額との合計額は1億円)が限度額です。
障害の種類や程度に応じた適切な雇用管理のために、必要な介助などを行う場合にかかる費用を助成する制度です。
支給例:職場介助者の配置または委嘱助成金の場合
事務的業務に従事する2級以上の視覚障害者や、2級以上の両上肢機能障害者などに対して、業務遂行に必要な職場介助者を配置した場合には、1人につき月15万円(年150万円)を限度に、最長で10年間支給が受けられます。
職場への適応に課題がある障害者に対して、職場適応援助者による支援を行うときに支給されます。障害の種類や支援時間によって、助成される金額や支給期間は異なります。
支給例:企業在籍型職場適応援助者助成金の場合
月額3〜12万円が最長6ヶ月支給されます。また、企業在籍型職場適応援助者養成研修の受講料の1/2が助成されます。
労働者の障害特性による通勤等の課題を、解消または軽減する措置を行う事業主に対して、その費用の一部を助成する制度です。
支給例:住宅の賃借助成金の場合
重度身体障害者や知的障害者などに対して、住宅の賃借にかかる費用の3/4が助成されます。限度額は、単身者用で月6万円、世帯用で月10万円が10年間支給されます。
訓練対象障害者について、障害者職業能力開発訓練事業を行うために、必要な訓練施設または設備の設置などをする場合や、障害者職業能力開発訓練事業を行う場合に支給されます。
支給例:施設または設備の設置、整備、更新を行う場合
はじめて助成金の対象となる訓練科目ごとの施設または設備の設置、整備の場合には、5000万円を上限として、かかった費用の3/4が助成されます。
障害がある有期雇用労働者を、正規雇用労働者や無期雇用労働者に転換する場合や、無期雇用労働者を正規雇用労働者に転換する場合に、いずれかの措置を継続的に講じた事業主へ支給される助成金です。
支給例:重度身体障害者を有期雇用から正規雇用に転換した場合
支給対象者1人あたり、支給総額は120万円、支給対象期間は1年間となります。
障害者雇用に関わる助成金を受けられると、雇用環境の整備などにかかる経済的な負担を大幅に軽減できる可能性があります。
助成金の種類や要件などを十分に理解し、障害のある人が安心して働けるよう、雇用環境を整えていきましょう。
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