掲載日 2022.12.23
障がいのある人を雇用するにあたって、まずは日本の障がい者雇用の現状と課題について理解しておきましょう。
厚生労働省が発表した「令和3年 障害者雇用状況の集計結果」によれば、民間企業や公的機関、独立行政法人での雇用障がい者数は、前年に比べて増加しています。とくに民間企業においては、雇用障がい者数と実雇用率がともに過去最高を更新しました。
障がい者を雇用する企業が増えている背景には、下記のような理由があります。
民間企業で雇用されている障がい者の総数は、約600万人です。障がい種別の雇用者数と前年比をみると、とくに精神障がい者の雇用者数が大きく増加していることがわかります。
雇用者数(人) | 前年度比(%) | |
---|---|---|
身体障害者 | 359,067.5 | 100.8 |
知的障害者 | 140,665.0 | 104.8 |
精神障害者 | 98,053.5 | 111.4 |
精神障がいのある人が年々増えていることや、2018年4月から精神障がい者も雇用義務の対象になったことが、雇用者数の増加につながっていると考えられます。
雇用障がい者数が増加する一方で、民間企業での障がい者雇用においては、下記のような課題が明らかになっています。
障害者雇用促進法によって定められている法定雇用率は、2021年3月より民間企業では2.3%となっています。
しかし、法定雇用率を上回るのは従業員1,000人以上規模の企業であり、従業員300人未満の中小企業における実雇用率は2.0%前後にとどまっています。
従業員数 | 実雇用率(%) |
---|---|
43.5~45.5人未満 | 1.77 |
45.5~100人未満 | 1.81 |
100~300人未満 | 2.02 |
300~500人未満 | 2.08 |
500~1,000人未満 | 2.2 |
1,000人以上 | 2.42 |
また、中小企業における法定雇用率達成企業の割合は、従業員100〜300人未満の企業でも全体の5割程度です。
中小企業が障がい者の雇用に踏み切れなかった理由としては、「障害の状況に応じた職務の設定や作業内容、作業手順の改善が難しかった」「採用・選考に関するノウハウが乏しかった」といった理由が挙げられています。
求職者数は増加しているものの、実際に雇用される精神障がい者の数は、障がい者全体の2割以下と少ない状況です。また、他の障がい種別と比較すると、就職後の職場定着率は低く、勤続年数が短い傾向にあります。
就職後3ヶ月の職場定着率(%) | 就職後1年の職場定着率(%) | 勤続年数 | |
---|---|---|---|
身体障害 | 77.8 | 60.8 | 10年2ヶ月 |
知的障害 | 85.3 | 68 | 7年5ヶ月 |
精神障害 | 69.9 | 49.3 | 3年2ヶ月 |
精神障がい者を対象とした前職の離職理由に関する調査によれば、「職場の雰囲気や人間関係」「賃金や労働条件への不満」といった、職場環境に関連する離職理由が多い結果となっています。
企業側には、精神障がいに対する社内理解を促すとともに、障がい特性に応じた職場環境の整備が求められるでしょう。
障がい者雇用の現状や課題をふまえて、国は障がい者を雇用する事業主への助成措置の拡充や、障がい者の就労支援体制の見直しといった対策に取り組んでいます。
2020年の障害者雇用促進法の改正では、週20時間未満の障がい者を雇用する事業主に対する給付金制度の新設や、障がい者を雇用する従業員300人以下の中小企業に対する認定制度の創設などが実施されました。
また、法定雇用率については、「2023年4月の見直し等において、引き上げられる可能性がある」という見解を発表しています。障がい者の雇用実績がない企業や、法定雇用率を達成できていない企業については、障がいがある人の受け入れ体制を早急に整える必要があるでしょう。
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