掲載日 2023.02.17
障がい者の雇用を促進するため、国は障害者差別解消法と障害者雇用促進法の一部を改正します。法改正により、雇用分野以外でも合理的配慮の提供が義務化され、法定雇用率は段階的に2.7%まで引き上げられることが決定しました。
この記事では、法改正による変更点や、民間企業への影響について解説します。
障害者差別解消法では、平成28年4月から障がい者に対する「不当な差別的取り扱いの禁止」が義務化されました。一方で、「合理的配慮の提供」については、国や自治体では法的義務とされたものの、事業者に対しては努力義務となっていました。
しかし、令和3年5月に障害者差別解消法が改正されたことにより、これまで事業者に対して努力義務とされていた合理的配慮の提供が法的義務となります。障害者差別解消法改正法は、公布日である令和3年6月4日から起算して3年を超えない範囲で、施行日が定められます。
障害者差別解消法 (障害を理由とする差別の解消の 推進に関する法律) |
障害者雇用促進法 (障害者の雇用の促進等に関する法律) |
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対象となる分野 | 雇用以外のすべての分野 | 雇用分野 |
対象となる障害者 | 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 (引用:障害者差別解消法第二条一) |
身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。第六号において同じ。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者をいう。 (引用:障害者雇用促進法第二条一) |
差別的取り扱いの禁止 | 法的義務 | 法的義務 |
合理的配慮の提供義務 | 国や自治体では法的義務 事業者では令和6年6月4日までに法的義務へ |
法的義務 |
障害者雇用促進法では、すでに事業主による合理的配慮の提供が義務化されています。今回の障害者差別解消法の改正により、雇用の分野に関わらず、すべての分野で障がい者に対する合理的配慮の提供が法的義務となります。
障害者雇用促進法では、従業員が一定数以上の規模の事業主に対して、従業員に占める障がい者の割合を法定雇用率以上にすることが義務付けられています。 現状では、民間企業の法定雇用率は2.3%ですが、令和8年までに段階的に引き上げることが決定しました。
民間企業の法定雇用率 | |
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令和5年1月 | 2.30% |
令和6年4月 | 2.50% |
令和8年4月 | 2.70% |
参考:厚生労働省「令和5年度からの障害者雇用率の設定等について」
法定雇用率の引き上げにあたって、令和6年4月より障がい者の雇入れに必要な一連の雇用管理に対する、相談援助の助成金が創設される予定です。また、週10〜20時間働く重度の身体障害者・知的障害者・精神障害者については、実雇用率への算定が可能となる見通しです。
障害者差別解消法と障害者雇用促進法の改正は、民間企業にもさまざまな影響を与えると考えられます。
事業者による合理的配慮の提供が義務化されると、主に個人に対してサービスを展開している事業者に影響が出るでしょう。障がいのあるサービス利用者が合理的配慮を必要としている場合には、事業者の負担にならない範囲で対応する義務が生じます。
合理的配慮の内容は、対象者の障がい特性などによって異なります。合理的配慮の提供が法的義務となることにくわえて、具体的にどのような配慮が自社サービスでは必要になるのかについて、従業員と情報共有しておく必要があるでしょう。
厚生労働省が発表した「令和4年障害者雇用状況の集計結果」をみると、身体障がい者の雇用者数が減少する一方、知的障がい者や精神障がい者の雇用者数は増加しています。
とくに、精神障がい者の雇用伸び率は大きく、これから新たに障がいのある従業員を雇用するときには、精神障がいのある従業員を迎え入れる可能性が高くなるでしょう。
これまでに障がい者の雇用実績がない企業はもちろん、精神障がい者を雇用したことがない企業においても、法定雇用率の引き上げを見据えた対策が必要です。
障がいを理由とした差別の解消や、障がい者の雇用促進のため、国は今後もさまざまな施策を展開していくことが予測されます。
法改正に向けて、自社の障がい者雇用の現状や課題を明確にし、雇用計画や職場環境の見直しを早急にすすめていきましょう。
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